2019年7月17日水曜日

ゴブリンスレイヤーTRPG シナリオ作成の要点

2020/11/19 一部修正

 結構売れてるようですが、根本的にシナリオが足らない感があるので、GMをする人は自分でシナリオを作ってみましょう。


基本的なシナリオ作りのポイントはp525~p531に記述されていますので、そこに補完する内容です。先日書いた内容をまとめたようなものです。

●システムの特徴

 このシステムは2d6を使った判定としてはかなり判定基準値に幅があるため、得意な判定は大抵成功する、苦手な判定は大抵失敗する、といった事が明確になっています。
 したがって、例えば「移動力を使用しない」「戦闘は常に全力が出せる」「休息がいつも安全に行える」といった常に安定した状況であったり、同じ判定ばかり要求すると特定の能力に偏ったキャラクターだけが活躍して全くバランスを取ることが出来ません。

 また、一般的な戦闘重視のTRPGと同じ感覚でシナリオを作るとほぼ間違いなくバランスが悪くなってしまいます。これはブレイクスルーである呪文や因果点の効果が大きいため、一つ一つの戦闘毎にバランスを取ることが困難だからです。
 消耗や継戦カウンターといった要素を考慮してシナリオ全体で戦闘バランスを取る必要があります。



●どんなところを楽しんでもらうのか

 職業制のシステムの場合、シナリオを作るうえで職業ごとの役割や見せ場を用意するというのが一般的です。しかし、このシステムの低レベル帯(冒険者レベル1~3)では、あまり明確な役割分担をさせる必要がありません。特定の職業に就いていなくても特殊な技能以外は誰でも判定できる事と、低レベルでは職業による判定ボーナスより能力値による判定ボーナスの方が大きい事もあり、斥候でないキャラクターの方が罠解除能力が高かったり前衛職として戦士や武道家だけでなく斥候でも問題なく前に立ててしまうからです。職業別の見せ場作りは冒険者レベルが4以上になってからでも遅くありません。

 低レベル帯(冒険者レベル1~3)では消耗・継戦カウンター・呪文のリソース管理に力点を置いた方が良いでしょう。


●判定に使用する能力値の決め方

 判定能力値が12個もあると考えると複雑に感じますが、実際には体の「どの部分を」「どのように」使うかという2つに分けて考えると解り易いです。
 どの判定を用いるかは、大体以下のようなイメージで使用すると良いです

スタミナや筋力を使う判定→体力点
精神力や意志力を使う判定→魂魄点
手先の器用さや俊敏さを使う判定→技量点
知識や知覚を使う判定→知力点

短時間の能動的に行う判定→集中度
長時間に及ぶ行動の判定→持久度
瞬間的で受動的に行う判定→反射度


 戦闘中には集中度・反射度を使用する判定が多い一方、持久度は殆ど使用しません。
 しかし、戦闘中以外の行動は「○○し続ける」といった持続的な行為が結構あるので、能動的・受動的にかかわらず長時間継続する行為の判定は持久度を判定に使用しましょう。
 非戦闘時に持久度を用いた判定を積極的に使用すると能力値の使用頻度にバランスを取ることが出来ます。

 特に消耗するかどうかの判定で持久を使った判定を導入することで、戦闘における持久度の重要性を示すことが出来ます。


●移動力の活用

 移動力はスクエア戦闘などのハウスルールを採用していない限り使用することはあまりありません。目的地までの移動など多少で良いので移動力の差が影響するような判定などを盛り込むとよいでしょう。


●目標値の決め方

 シナリオ中でPCに何らかの判定をさせる場合の目標値は

冒険者レベルや職業レベルを足せる能動的な判定:冒険者レベル+10±2
冒険者レベルや職業レベルを足せる受動的な判定:冒険者レベル+12±2
冒険者レベルや職業レベルを足せない一般技能判定:12±3

くらいが妥当かと思われます。
 能力値による基本値が5、2d6の出目が5、職業レベルは冒険者レベルと同じ、技能は特になしを基本としています。高レベルシナリオの場合は技能をいくらか習得している事を考慮し、上限を4~6レベルでは+1、7レベル以上では+2しても良いでしょう。
 能動的な判定が受動的な判定より低めなのは、能動的な判定はPLが行動を宣言しない限り判定を行わない為です。

 〔熟練者向け〕:目標値を2段階に設定し、上記の目標値+5で通常の成功より良い結果を得られるようにすると、能力値・職業・技能を専門化する価値も出ます。
 より良い結果が得られる効果は例えば、
①行った行動にさらにボーナスを得る
②本来は成功しても消耗するところを消耗せずに済む
といった追加効果を付けるとよいでしょう。

 「出来る」と「出来ない」の間に「出来るけれど疲れる」という状態を挿入することで、PLの思い通りシナリオは進むが徐々に疲弊するという消耗ルールの特徴を効果的に表現することが出来ます。

 また、判定に成功しないと話が進まない状況で判定に失敗した場合は「酷い目にあったが何とか乗り越えた」という扱いにすることで、成功した場合より多くの消耗や負傷などの代償を伴うが望む行動は出来たことにするのも良いでしょう。


●リソース

 このシステムで重要となるリソースは「消耗」「継戦カウンター」「呪文」です。因果点は事故救済も兼ねているのでここではリソースとみなしていません。途中の戦闘や罠による負傷も回復させるために呪文のリソースを消費するかの程度で負傷自体をリソースとして考える必要はあまりありません。
 低レベルの単発シナリオの場合はこれらのリソースを満遍なく消費するように組み立てた方が良いでしょう。あくまで途中の戦闘はリソースを消費させる手段の1つと考えたほうが良いでしょう。


 ボス戦前に消耗が(継戦カウンターによるものを除く)3~5、継戦カウンター8~10、呪文1人1~2回使用くらいがリソース消費の目安です。これ以上浪費させるとPLがビビって行動できなくなる可能性があります。
 消耗は成功したら0または1、失敗したら1d3消耗するくらいの判定を2~3回ほど行うと丁度良くなります。
 序盤は目標値を低く消耗量も控えめで、中盤以降に消耗しやすく設定しましょう。序盤から消耗量が多いとPL達は「このシナリオは消耗が激しい」という錯覚を生じて行動が慎重になりすぎます。序盤は楽勝ムードを演じさせてPL達に勢いをつけさせる方が良いでしょう。

 〔熟練者向け〕:消耗する判定を4~6回分用意する代わりに、呪文を使用したり行動を工夫することで判定を回避できるようにしたり、上記の目標値の決め方で述べたように高い達成値を出す事で消耗を減らせるようにしても良いでしょう。


 継戦カウンターは標準の2回のモブ戦のみ場合、地形効果や増援などの工夫をしないとなかなか8~10進めるのは難しいです。継戦カウンターを進めるには戦闘回数を増やせば簡単ですが、プレイ時間が間延びするのでできれば戦闘2回でそこまで進められるようなギミックを用いて変化をつけると良いでしょう。
 標準のモブ戦では冒険者Lvと同じLvをPCと同数~2倍となっていますが、それよりも弱い敵をもっと沢山用意する方法もあります。(詳細はボス戦の項目を参照)

 〔熟練者向け〕:冒険者と同じレベル以下のモブを冒険者の半分以下の数の門番や見張り、非戦闘要員などとの遭遇を1シナリオ中に1~3回程度通常の戦闘以外に用意します。こういった遭遇は一瞬で倒せるのですが、戦う以上は継戦カウンターを消費するので速やかに排除する術も必要となります。
 これらは基本的には1ラウンドで処理できることを想定した敵なので、プレイ時間に余裕がなくPL達の同意が得られる場合は「1ラウンド消費して全滅させた」と扱ってしまっても良いです。また、熟練のPLであれば戦闘ラウンドを消費せず突破する手段を思いつくかもしれません。元々戦うためのイベントではないので、GMが妥当だと思えば判定や呪文の使い方次第で戦わずして突破する事を認めても良いでしょう。
 時間の無駄にも見えますが、もしこういった戦闘が無いと「戦闘は常に全力で戦えばよい」思考に陥ってしまいがちです。熟練PL相手ならばリソースを使うべきか否かを状況判断させる事もゲーム性となります。


 呪文はボス戦前に平均1人1~2回分くらい消費する機会があるのが理想的です。呪文の消費量は消耗や継戦カウンターなどの他のリソースと連動しています。
 例えば《追風》を使って移動力を上げれば長距離移動による消耗する判定回数を減らせたり、《火球》で範囲攻撃すれば弱い敵を早く殲滅出来て継戦カウンターを進まなくすることができます。
 呪文を使用するかどうかの判断はPLがすることなのでGMとしては予測は出来ないのですが、戦闘以外で用意したイベントでも、特定の呪文を効果的に使用した場合どう処理するかをあらかじめ予測しておくと慌てなくて済みます。キャンペーンやプレロールドならPCが使用できる呪文は大体把握できるのでよりイメージしやすいです。

 このシステムでは途中のイベントを全て呪文で片付けて楽々乗り越えられたとしても全く問題はありません。その場合は、最後のボス戦でほぼ呪文が尽きていることになるでしょうから、正面からの殴り合いで決着をつける事になります。逆に呪文を温存してボス戦を呪文連打で瞬殺しても問題はありません。この場合は途中のイベントで相当苦労しているでしょうから。
 PL達が呪文連打で楽勝でイベントを攻略したにもかかわらず、なお呪文でボスが打ちのめされる場合は、ボスにたどり着くまでのイベント量が単純に不足していると考えられます。



●ボス戦

 ボス戦は最後の見せ場です。
 ただし、ボス戦にたどり着くまでに呪文や因果点を温存していた場合は瞬殺される場合がありますが、そんな事もあると割りきってしまいましょう。そういった手慣れたメンバーの場合はボスを強くするよりも、まずそれ以前のイベントをもっと手強いものにしてみましょう。

 ボス戦では強敵を少しだけ出すというのはこのシステムでは(特に単発シナリオでは)あまり良い選択ではないです。
 システム的に判定基準値の幅が大きいため、敵の命中や回避を高く設定することだけで脅威を与えようとすると「職業レベルが高い」「命中や回避の高い装備」「特定の能力値の高い種族」を極端に優遇することになり、活躍機会の公平性が損なわれてしまいます。
 ボス戦ではお供として多数のモブを出す事で、どんなキャラクターでも活躍できる機会を作り出せます。
 その際、3レベルシナリオ以上の場合は冒険者レベル+2のボスでは冒険者レベルと同じレベルのモブの支援を受けられないので、支援を受けるためにはPCのレベルより低いボスのレベルの半分以下のモブを必ず用意する必要があります。

 モブ戦・ボス戦共にPCの冒険者レベルより低いレベルのモブを出す場合は、PCの冒険者レベルとの差の倍数(1差の場合は1.5倍)だけ登場させると丁度良いかと思います。実際に戦うと敵としては弱くなると思われますが、雑魚多数に対する対策を立てなければならないのでPLが感じる脅威としては同じくらいになります。このシステムでは弱い敵だからといって沢山いると消化試合にはならないのです。
 例:5レベル冒険者に対して1レベルの怪物を出す場合は4体で5レベルの怪物1体相当と扱う


●怪物(熟練者向け)

 ルールブック記載の敵は(ホブゴブリンのような一部を除き)やや控えめな強さにしてある感じです。テキスト上は特定の攻撃に対する耐性がありそうな記述がされていても実際には耐性が設定されていなかったりします。
 おそらく低レベルでの事故率を抑えるためだと思われます。
 もしPLが熟練者ぞろいならシナリオに合わせて怪物のデータも少し加工しても良いでしょう。例えば装備している武器を変更したり、追加の攻撃手段を増やしたり、耐性をつけたりといった方法です。怪物知識判定に成功した場合は、この変更点も含めデータを公開すれば不満もないでしょう。
 単純に命中や回避を上げるだけのような安易な調整はお勧めしません。(持たせる武器を変更するなどで結果的に変化する場合を除く)

 特に単独のボスを出す場合はレベルの高い怪物を出すのではなく、既定の強さの怪物を出す代わりに大幅に改造する必要があります。ルールブック上のデータはお供を引き連れている前提ですので、単独の場合は通常の3倍以上の耐久力を与えないとお供を引き連れているボスのようには継戦カウンターを稼ぐことは出来ないでしょう。


●報酬

 報酬はp531に記述されていますが、この報酬だけでは正直少ないので、これ以外に冒険中に敵の所持品や隠された財宝などで入手できる機会を用意すると良いかと思います。
 能動的に行動をすることで報酬が増えるようにするとPLも積極的に動いてくれると思います。
 敵の武器などを回収する場合、全て持って帰られるのが嫌ならば1/2~1/3の確率で壊れて使い物ならないとしても良いでしょう。(個人的には換金率3割なのであまり気にしないですが。この場合、敵の武器などは基本的にすべて売却するものと仮定し、3割計算で財宝の一部と考えます。)
 ダイスを振って決めるランダムトレジャーを用意する場合は数値の高い出目の方がより良い報酬になるようにチャートを作成します。因果点で振り直す時に出目を+1する選択肢があるからです。

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