2017年10月22日日曜日

Pathfinderゲームマスターガイド3.5 -戦闘2-

3-3.地形効果の利用
 フロアタイルとミニチュアを使うこのゲームの戦闘は遮蔽も障害物もない平らな場所で戦闘で行うとは限りません。様々な地形効果を利用した戦闘を行うことができます。地形効果を利用した戦闘は抽象戦闘では表現できないボードゲーム的な面白さがあります。こういった地形効果は呪文などによる一時的なものを除けばGMが敢えて用意しない限りほとんど存在しません。
 多くの場合、地形効果はPCにとって不利に働くことが多いため多用すると嫌われるかもしれませんが、モンスターの脅威度はそのモンスターが力を発揮できる場所での戦闘を想定した強さで設定されているので、GMは地形効果を利用してもよいのです。
 地形効果はモンスターの能力を発揮するためだけではありません。プレイヤーキャラクターの側も単に正面から殴り合っているだけでは発揮できないような能力を引き出し、普段とは違う見せ場を作るためでもあるのです。PCの誰も有利さを感じないような地形効果ではただの嫌がらせに思われてしまいます。
 地形効果は戦闘にアクセントをつけるスパイスなので、その多くは途中のイベントでの戦闘に向きます。
 以下は典型的な地形効果を説明します。

a.遮蔽物ない平らな場所
〇:射撃、呪文、飛行移動
△:近接
 こういった場所での戦闘は意外と少ないです。ワイルダネスアドベンチャーで平らな草原を歩いているときの遭遇ぐらいしかありえません。敵と遭遇した場合での距離が非常に離れた場所になります。そもそも離れすぎていて近づかないと敵なのかどうかすら確認できない場合も多いです。多くの場合、呪文などのバフを使う時間は十分ありますが、下手に呪文などで戦闘態勢をとると、戦わなくてもよい相手を刺激する可能性もあります。明らかに敵だと認識できない限りある程度近づいてからの戦闘となります。離れた位置から戦闘が始まってしまうと隊列は崩れますし、前衛が近づく前に戦闘が終わってしまう可能性もあります。
 また、特殊な戦闘が起きる場合があります。それはドラゴンのような飛行モンスターです。移動力が高く、近接武器の届かない位置から特技などによってヒット&アウェイを繰り返したり、飛び道具などによって上空から一方的に攻撃が可能です。レベルが上昇するとこちらも飛べるようになりますが、低レベルでは前衛がダメージを与える手段が限られる上に、後衛の壁にすらなれません。後衛の防御手段の少ない低レベル帯では非常に危険な戦闘になります。

b.罠
〇:ローグ
△:近接
 戦闘エリアでの罠も立派な地形効果です。前に立つローグがいる場合それほど問題がありませんが、そういったローグがいない場合はかなり危険な存在です。
 戦闘域での罠の使用はGMも注意が必要です。まず、罠自体が脅威度を持つため、遭遇の難易度を決める際にモンスターの脅威度に加える必要があります。
 また、敵が用意する罠としては落とし穴がとても効果的なのですが、ゲームとしてはかなり問題があります。落とし穴の場合、低レベルでは戦闘中にそこから這い出ることができないため、落ちてしまったキャラクターが戦闘に再度参加することができません。各個撃破は戦術的には正しいのですがGMが用意するイベントとしてはあまり好ましくないのです。障壁も扱い方によっては同様の問題が発生します。スパイク、矢、爆発などのダメージや毒ガスなどによる能力値ダメージ、トリモチのようにその場から動けなくなるなど、それなりにペナルティはあるが行動自体を阻害しない程度の罠が良いです。
 罠を仕掛けた相手が敵なら、その敵は自分の仕掛けた罠を避けて行動するため、不自然な動きをするはずです。これは暗に罠の存在を敢えてアピールして戦う戦闘だと思えば問題ないです。

c.段差・飛び石
〇:軽戦士、射撃、呪文、飛行移動
△:重戦士
 地形効果の中では使いやすく、頻繁に出すことができます。視線や射線は通りますが、段差や穴が開いていて歩いて直線移動できないといった地形です。
 後方から射撃や呪文による援護をする敵を用意する場合、こういった敵を段差の上などに用意することで、すぐに隣接されることを防ぎます。
 ダンジョンのような狭いエリアでの戦闘の場合、軽戦士が重戦士より活躍することが難しいですが、段差や飛び越えなければいけない穴がある場合は〈軽業〉が生き、軽装の有効性がでてきます。
 段差がある場合、高い位置から低い位置への攻撃は命中に+1のボーナスがあります。ただ、足払いはできないとしても良いでしょう。段差が大きすぎる場合は平面上は隣接でも攻撃できないとすべきでしょう。ルール的な定義がありませんが、高さも5ftごとに1マスと考えてよいかと思います。

d.移動困難な地形、足場が不安定
〇:飛行移動、射撃、呪文
△:地上移動
 移動困難な地形は地形効果の中でも特に使いやすい効果です。瓦礫が崩れ落ちていたり、背の高い草が茂った場所など足場が悪かったり視線や射線は通るが移動を妨げるものがあったりする場合に用います。移動困難な地形は特技などで多少緩和できますし、追加呪文には無効化できるものがあったりと対策も立てやすいです。
 なお、同じ瓦礫などでも、小さい瓦礫の場合は移動コストが2倍になる移動困難な地形と扱いますが、大きくなると移動コスト+2扱いになる障害物に、さらに大きいと通過不可能な遮蔽物になります。
 また、足場が不安定なのは揺れるつり橋の上や滑る氷の上、荒波の中の船上といった場合の戦闘です。条件によっては〈軽業〉判定に成功しないと転倒する可能性があります。
 詳細は〈軽業〉技能を参照してください。

e.視界不良
〇:視覚以外の知覚能力を有する者
△:それ以外全員、特に射撃、呪文
 霧や煙が立ち込めているなどといった状態です。全く視界が無いとゲームにならない可能性もありますし、フロアタイルで表現しづらい(キャラクターは本当は見えていないのにメタゲーム的に見えてしまう)状況が起きるので、やや視界が悪く離れていると視線が通らないといった程度の濃度が丁度よいです。
 なお、暗闇は普段から対策が立てられているでしょうから、特別な地形効果とは言えません。

f.多数の遮蔽物
〇:近接
△:射撃
 遮蔽物が戦闘域にあることは多いのですが、その遮蔽物が非常に多い戦場は射線が通り辛く、特に射撃を得意とするキャラクターには痛い所です。逆に近接攻撃を得意とする場合、遮蔽を取りつつ接敵できます。呪文は遠隔接触呪文を除いて部分遮蔽があっても視線さえ通れば問題ないですし、ファイアボールのように中心から爆発する範囲呪文なら目標の場所さえ判っていれば見えなくても効果を発揮できるので射撃ほどは影響を受けません。
 飛行キャラクターは歩行移動を制限する程度の大きさ障害物であれば素通りできるのですが、木や石柱などのように背の高い遮蔽物が多すぎると真っすぐに飛べなくなって移動に制限を受けます。

g.水辺・水中
〇:水泳能力を有する者
△:それ以外のすべてのPC
 水棲系モンスターを出す場合、どうしても水辺や水中、船上戦のような水に関わる場所を用意しなければなりません。特に水中戦では種族能力やクラス能力で水泳能力を持つ限られたキャラクター以外には単にペナルティでしかなく、対策を立てないと手も足も出ません。
 したがって、事前に水中戦があるように伝えておく必要があります。コンベンションではゲーム開始してからそれを伝えると、そこから慌てて準備をすることとなり時間をかなり費やしてしまうので、キャラクター作成時にあらかじめ伝えておく必要があります。
 溶岩だまりのような特殊な地形も、この種の地形効果と同様に扱います。

h.狭すぎる通路、低すぎる天井
〇:小型以下、術者
△:中型以上
 小型以下のモンスターが生息するダンジョンでは人間が通るのには狭すぎる通路や天井が低すぎて腰を屈めないと移動できないようなダンジョンがあっても不思議ではありません。
 基本的には“無理矢理入り込む”のルールに従います。
 狭すぎる通路(1/2ft)では小型以下は普通に移動できますが、中型は1マスの移動を2マス分と数えますし、攻撃ロールに-4のペナルティと、ACに-4のペナルティを受けます。大型以上は〈脱出術〉判定が必要です。狭い場所に対し、〈脱出術〉を用いて無理矢理入り込むことによって通過したり侵入したりしている間は、攻撃を行うことができず、ACに-4のペナルティを被り、ACに対する【敏捷力】ボーナスを失います 。
 天井が低すぎる場所はルール的に表記がありませんが、これも基本的に“無理矢理入り込む”のルールに従えば良いと思います。ただし、大型の場合は伏せ状態で這い進むと処理した方が良いでしょう。
  なお、大型のみが天井が低いと感じる程度の高さではキャラクターサイズの違いによる差があまり出ませんし、小型でも天井が低いと感じるようなダンジョンは移動が困難過ぎて先へ進もうとしなくなるのでお勧めできません。
 こういった狭さによるペナルティは呪文には影響が小さいので、呪文を得意とする場合は有利に働きやすいです。

 以上のような地形効果を1つもしくは複数組み合わせて戦場を作ります。沢山組み合わせすぎると複雑になり、プレイ時間がかかりすぎるため注意が必要ですが、単調な戦闘にならないよう色々試してみてください。
 なお、敢えて敵に不利な地形効果を用意し、代わりにモンスターデータを強くする(モンスターを沢山出す)方法もあります。



3-4.戦闘前の準備について
 このシステムには沢山の支援呪文や特殊能力(いわゆるバフ)があり、それを組み合わせることで仲間を劇的に強化することが可能です。こういった支援効果を戦闘前にどれくらい準備を認めるかによってゲームバランスがかなり変わってきます。
 基本的にはクライマックス戦闘は十分な準備時間を与える代わりに敵を強めに用意してもよいのですが、それ以外の戦闘は準備時間を無条件に与えるべきではありません。もちろん、準備時間を与えなくてもプレイヤーの機転で準備時間を確保することは可能です。例えば、ローグが偵察してあらかじめ敵を把握し、離れた場所で呪文などを準備した後突入するとか、戦士が交渉しつつ、その陰で《音声要素省略》や《動作要素省略》などを使いつつ呪文を準備するといった具合です。(敵も術者であるなら、交渉中に堂々と呪文を唱えると敵対行為であると認識される可能性があります。)
 なお、ややコストパフォーマンスは落ちますが、ポーションであれば音は出しませんし、事前準備ではやることがあまりない非術者でも呪文効果を得られるのでなかなか便利なアイテムです。
 ポーションはコンベンションのシナリオでも途中のイベントなどで配置しておいても良いでしょう。とくに消耗品コストを何倍かにしている場合はあまり所持していない可能性があります。

呪文などの準備時間には一般に
1ラウンド/レベル
1分/レベル
10分/レベル
1時間/レベル
などがあります(もちろん、それ以外の呪文もあります)。一般的に冒険者の活動時間は6~8時間ですから、1時間/レベルはともかく、10分/レベルは常時にかけ続けることは難しいでしょう。(もちろん高レベルになると、低レベル呪文なら《呪文持続時間延長》などを組み合わせたり、ワンドを使いつぶすつもりで常時維持することが出来るようになります。)1分/レベルや10分/レベルの呪文は戦闘が起きそうな場面であらかじめ使用しておくといった使い方が多くなるため、非戦闘時のGMの状況説明や演出、イベントの配置順が重要になってきます。

 次回はようやくシナリオに関して

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